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いまさら聞けない不動産投資の基本(7/18)

知っておくと心強い不動産投資の「指標」

浅井佐知子浅井佐知子

2016/02/23

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不動産投資にはどんな指標があるのか

 それでは、不動産投資で使用される指標を紹介しましょう。

(1)GPI(Gross Potential Income:潜在総収入)
 空室や滞納による損失がまったくないと仮定した場合の年間賃料収入総額(満室時賃料)のことで、物件から得られる年間の最大収入額を意味します。

(2)EGI(Effective Gross Income:実行総収入)
 GPI(潜在総収入)から、実際の空室と滞納による損失額を差し引いた収入総額のことです。

(3)OPEX(Operating Expenses:運営費)
 所有物件の固定資産税・都市計画税、損害保険料、管理費、共用部分の水道光熱費などランニングコストの総額。ローンの金利と減価償却費は含みません。

(4)CAPEX(Net Operating Income:Capital Expenditure:資本的支出)
 単に不動産を維持するための修繕費用ではなく、不動産の価値や耐久年数を延ばすための経費不動産の価値や耐久年数を延ばすための経費をいいます。大規模修繕費用などがこれに当たります。

(5)NOI(Net Operating Income:償却前営業利益)
 EGI(実行総収入)からOPEX(運営費)を引いたもの。不動産のもつ収益力を最も客観的に表す指標と考えられています。

(6)BTCF(Before-Tax Cash Flow:税引き前キャッシュフロー)
 NOI(償却前営業利益)から年間返済総額を差し引いた税引き前の現金収入のことです。

(7)ATCF(After-Tax Cash Flow:税引き後キャッシュフロー)
 CF(キャッシュフロー)から税金を引いたもの。税金を納めた後の実際の手残りのことをいいます。

(8)ADS(Annual Debt Service:年間元利金返済額)
 元金と金利を合計した1年間の返済総額のことです。

(9)FCR(Free and Clear Return:総収益率)
 投資がどれだけの利益を生むのか(投資効率)を表す指標で、「NOI÷総投資金額(物件価格+購入諸経費)」で算出。「ネット利回り」ともいわれています。

(10)K%(Loan Constant:ローン定数)
 ADS(年間返済総額)のローン残高に対する割合です。「ADS÷借入総額」で算出。借入金額に関係なく、金利と期間のみによって決まります。融資金の調達コスト(=貸手側から見る利回り)の指標で、K%とFCRを比較をすることによって、レバレッジ効果が働いているかどうかの判断ができます。「FCR>K%」の状態が「レバレッジが効いている=投資が成立している」と考えられます。

(11)CCR(Cash on Cash Return:自己資本配当率)
 自己資金総額に対するキャッシュフローの割合です。この数字が高いほど投資効率が高いといえます。自己資金額は実際に投入した金額なので、オーバーローンのように自己資金がない場合は意味がありません。

(12)PB(Pay Back Period:資金回収期間)
 投資した自己資金が何年で回収できるかという数字です。「自己資金額÷年間のキャッシュフロー」で計算できます。

(13)BER(Break Even Rate:損益分岐入居率)
「(OPEX+ADS)÷GPI」。GPI(総潜在収入)に対する、OPEX(運営費)とADS(年間元利返済額)の合計額の比率で、各年度のOPEXとADSの合計を賄うためには空室率をどこまで許容できるかを判断するための指標です。一般的には70パーセント以下が目安とされています。

(14)DCR(Debt Coverage Ratio:借入金償還余裕率)
「NOI÷ADS」。ADS(年間元利返済額)に対するNOI(純営業収益)の比率です。DCRが大きいほど、借り入れ返済の確実性が高くなり、返済できなくなる可能性は低くなります。一般的には1.3以上が目安とされています。

(15)IRR(Internal Rate of Return:内部収益率)
 物件を購入してから売却するまでの全収益の利回りを示す指標です。借入金利を上回っていれば投資の実行価値があると考えられます。

(16)NPV(Net Present Value:正味現在価値)
 増加した正味金額を現在の価値に補正したもので、投資案件の最終的な儲けを示します。

特に注目しておくべき指標は?

 このように、理解するのがむずしいものもあると思いますので、全部覚えようとする必要はありません。必要に応じて、要所要所で確認するのがいいと思います。そこで、注視しておきたい指標を以下に記しておきます。

 まず、毎月の収入(利益)を重視する場合は、BTCF(税引き前キャッシュフロー)を注視しましょう。見かけの表面利回りではなく、実質的に残るお金がわかります。CF第一主義を掲げている業者も多く、ATCF(税引き後キャッシュフロー)以上に注目すべき数値です。

 そして自己資金の回収を重視する場合は、CCR(自己資本配当率)とPB(資金回収期間)を注視します。損はしたくないという人は、この数字を押さえておきましょう。最後に、トータルでの利益を重視するときには、IRR(内部収益率)とNPV(正味現在価値)をチェックします。このふたつの数字については計算方法が複雑なので、シミュレーターなどを活用することをおすすめします。

 自分の投資の目的に合わせて、必要な指標を計算してみましょう。

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この記事を書いた人

不動産鑑定士

浅井佐知子不動産鑑定事務所代表。 北海道網走郡美幌町出身。上智短期大学英語科卒業後、紅弥不動産株式会社、三井ホームエステート株式会社で10年間主に法人営業(土地の有効活用)を担当。 「あっ、私この会社に就職したい! 」という突然のひらめきで就職したときからはじまった不動産人生。個人の賃貸営業を皮切りに、土地の有効活用、寮・社宅営業、法人の一棟ビル売買営業と移っていく中で、常にお客様のことを考え圧倒的な支持を得、伝説の営業成績を残す。 その後結婚、出産、子育てをしながら勉強をして不動産鑑定士の資格を取得、計20年以上の不動産業の経験を積む。 「不動産鑑定士の資格を持った不動産投資コンサルタント」としての実績も豊富で、不動産投資家からの信頼も厚く、きめ細やかなサービスで支持、信頼を得ている。 国土交通省の地価公示評価員、国税庁の相続税路線価、固定資産税評価員などの公的な仕事のほかに、税理士、弁護士などからの依頼で、12年間で1000件以上の鑑定評価書を書き、税務署や裁判などから顧客を守り続けてきた。 またアパートの賃貸から土地の有効利用、店舗、事務所の賃貸、不動産売買、不動産鑑定、不動産コンサルとあわせて計5000件以上の案件をこなしてきた。 ミッションは、「良質な不動産情報とサービスで人を幸せにする」。

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