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隠れたもうひとつの国による地価調査「土地LOOKレポート」をご存知ですか?

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2020/01/02

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画像/123RF

毎年大きなニュースとして採り上げられる、国などによる公的地価調査といえば…


公示地価(国土交通省)
路線価(国税庁)
基準地価(都道府県・取りまとめは国交省)


以上の3つが有名です。


これらは、不動産、金融といった各業界のプロだけでなく、一般の皆さんの関心も広く集めています。たとえば、例年話題となるニュースに、「全国の地価のトップは銀座5丁目鳩居堂前」と、いうものがあります。これは、国税庁による路線価の発表によるものです。


そこでもうひとつ。あまり知られていない、隠れた(?)国による地価調査を皆さんにご紹介したいと思います。国土交通省の「地価LOOKレポート」です。


日本の地価動向を把握するための第4の公的指標として、主にプロの皆さんが、発表されるごとにその内容をチェックしています。のみならず、ライブ感に満ちていて、とても面白いレポートになっています。概要は以下のとおりです。


名称:
「地価LOOKレポート」(正式名称:主要都市の高度利用地地価動向報告)


調査目的:
主要都市における地価動向を先行的に表しやすい高度利用地等の地区について、四半期ごとに地価動向を把握することにより、先行的な動きを明らかにする


調査内容:
不動産鑑定士による情報収集、および鑑定評価に準じた方法による地価動向の把握。その結果を国土交通省が集約。さらに各地区の不動産関連企業、金融機関等へもヒアリング


対象地域:
三大都市圏、および地方中心都市等において、特に地価動向を把握する必要性の高い、住宅系地区および商業系地区、計100地区


公表方法:
対象地区についての四半期ごとの変動率を9 区分で表示、など


なお、このレポートの特徴はさきほどもふれたライブ感です。おおむね3つの要素がそれを生み出しています。


■9区分の表示

ひとつは、上記にも触れた「9区分の表示」です。


下記の9つのデータを示すそれぞれの指標が、色分けされ、さらにデザイン分けもされた矢印によって表されています。それらが、「表」、「地図」、「詳細情報(解説)」の各所に、統一的に使用されるかたちです。ほんのわずかな工夫ですが、これだけで、地価動向の把握のしやすさという面での格段の効果を生んでいます。


9種類の矢印は、それぞれ以下のような区分になっています。

地価が上昇
 6%以上
3%以上6%未満
0%超3%未満


横ばい
0%


地価が下落
0%超3%未満
3%以上6%未満
6%以上9%未満
9%以上12%未満
12%以上


■不動産鑑定士によるコメント

2つ目の要素は、不動産鑑定士によるコメントです。調査対象全地区につき、それぞれの地価動向を生み出している根拠が、具体的かつ簡潔に言葉でまとめられています。


土地の評価というものは、数字で現在と過去は把握できても、それだけではなかなか将来をイメージしにくいものです。しかし、そこに人の言葉が加わると、トレンドが見えやすくなります。未来を具体的に想像しやすくなるというわけです。


■四半期ごとの公表

3つ目の要素は、このレポートが四半期ごとの公表であることです。


公示地価も、路線価も、基準地価も、いずれも1年ごとの公表です。途中丸1年を挟んでいます。そこで、世の中はこの3調査を組み合わせて、公的発表による1年間の地価動向を見ていくのですが、公示地価の評価時期は毎年1月1日時点、路線価も1月1日時点、基準地価は7月1日時点となっているため、実際上これらは年2度の調査ということになります。その点、地価LOOKレポートはリリースが頻繁です。より新鮮な地価動向を把握していきやすいということになるわけです。(もちろん4者を組み合せるともっと効果は上がります)


以上、まずは一見に如かずです。下記リンク先をご覧になってみてください。


・主要都市の高度利用地地価動向報告~地価LOOKレポート~(概要説明)
・~地価LOOKレポート~これまでの発表資料


なお、2019年11月上旬時点で、公表されている最新の地価LOOKレポートは、令和元年第2四半期分(4/1~7/1)となっています。早速覗いてみましょう。概況として、対象100 地区における地価動向については、


上昇 97地区(前回97)
横ばい 3地区(前回3)
下落 0地区(前回0)
上昇地区の割合は6期連続して9割を上回った


との状況が示されています。要は、地価が上がっている地区ばかりがぎっしりとひしめいているかたちです。こうなると、むしろ気になるのは「横ばい」の土地です。どこなのでしょうか? ひとつは、東京都中央区の「銀座中央」地区です。区分は商業系地区となっています。さらには、


神奈川県横浜市中区の「元町」。商業系地区
福岡県福岡市中央区の「大濠」。住宅系地区


それぞれ、評価にあたった不動産鑑定士のコメントを見てみましょう。(要所を抜粋)


銀座中央
「需要は底堅いが」
「高額な賃料を負担できる需要者は限られる」
「地価は依然として高水準を維持しつつ概ね需給が均衡」


横浜・元町
「優れた集客力を維持」
「平成30年以降、(中略)空き店舗が目立つようになって、当期も同様」
「中華街からの客足の流れや平日の客足の減少傾向も見られる状況も継続」


福岡・大濠
「福岡市内では全般的にマンション販売に陰り」
「しかし、当地区は立地条件や居住環境が優れる」
「大手デベロッパーについては当地区に対する投資意欲は依然として高い」


いかがでしょうか。


銀座中央 …すなわち高止まり
横浜・元町 …わずかに衰退の兆し?
福岡・大濠 …むしろ他地域への注視を促す内容か?


「地価動向を先行的に表しやすい高度利用地等」にあっての以上のデータ、それぞれに興味深いところです。


(文/朝倉継道 画像/123RF)



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この記事を書いた人

編集部

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