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ミレニアル世代はこんなにも「賃貸志向」

オーナーは期待を寄せられている?

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2019/09/14

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画像/123RF

賃貸経営は、供給側と需要側の意識のギャップが生じやすいサービスだといわれています典型的といえるのが、オーナーさんと入居者さんとのジェネレーションギャップです。


いまは少なくなってきてはいますが、「若い人は、なぜバス・トイレ一緒の3点ユニットがそんなに嫌いなの?」と、不思議がるオーナーさんが、近年まで大勢いらっしゃいました。そんなオーナーさんの多くが、風呂なし・共同トイレの4畳半や6畳の下宿で青春を過ごした世代でした。


「たしかに3点ユニットは狭苦しいとは思うけれど、部屋に専用のバス・トイレがあるなんて、それだけで贅沢じゃない」


そんな感覚で、なぜ?と、首をひねっておられたのです。


一方、客である若い入居者さんたちは、生まれた時分から自宅には広いバスルームがあり、トイレには洗浄機能や暖房機能が付いていて当たり前といった環境で育ってきています。


なので、3点ユニットを見て、「ホテルみたいに機能的だね」と、彼らは思ってはくれませんでした。「まるで安いホテルみたいに窮屈だね」が、ごく自然な印象だったのです。


「狭いし、お湯に浸かれば目の前に便座。1泊、2泊だったら耐えられるけど、とてもじゃないけど毎日は無理」


と、いった感覚を旧世代のオーナーさんは共有できずに来たというのが、ここ10数年くらいにわたる状況でしょう。


そんな、ジェネレーションギャップを住まいの観点から切り取った面白い調査結果をジャパンネット銀行さんが公表しています。


「ミレニアル世代と親世代、『住まいと暮らし』の価値観を調査」と題されたレポートです。


内容をひと言で表すと、「ミレニアル世代は賃貸の味方」です。彼ら若い世代のもつ、住まいや暮らしに対する新しい感覚は、賃貸住宅ととても相性がいいのです。


ただし、彼らからのせっかくのラブコールに対して、現在の賃貸住宅は、ひとつ大きなネックを抱えています。


代表的な設問・回答を紹介しましょう。なお、その前にミレニアル世代とは…?


本調査では、「2000年以降に成人・あるいは社会人になる世代のことを指します」としたうえで、実際の調査対象は


・18~25歳(300名)
・調査期間 2019年1月24日~1月28日


と、設定されています。


つまり、2010年に成人した人でも、今年はもう30歳が間近ですから、上記はかなり若い括りとなっています。


さらに、これに加えて「18~25歳の子どもを持つ40~59歳・300名」もアンケートの対象とし、両世代の意識の違いを探ろうしたのが、今回の調査です。


とても象徴的な質問があります。


「自分の同世代に興味を持たれそうだと思う住まい方・暮らし方として、当てはまるものをお選びください」


アドレスホッピング
(固定の家に住まうことなくさまざまな場所に住む暮らし方)
ミレニアル世代 …30.7%
親世代 …9.7%


サードプレイス
(自宅や職場ではない心地よい第3の居場所を持つこと)
ミレニアル世代 …28.7%
親世代 …9.7%


デュアルライフ
(2つの地域に拠点をもった生活。都市と田舎、国内と海外など)
ミレニアル世代 …22.3%
親世代 …13.3%


いかがでしょうか。以上においては、いずれの回答からも、ミレニアル世代における、


「定住よりも移動の自由」
「固定された一個の住まいよりも複数の拠点」


を魅力に思う感覚が窺えます。親世代との差が大変顕著なことも注目点といってよいでしょう。


そしてこれら、アドレスホッピング、サードプレイス、デュアルライフといったライフスタイルは、いずれも賃貸住宅という業態に絡みやすいものです。賃貸住宅市場をさまざまな方向に広げてくれる可能性が感じられる点にも、ぜひ注目しておきたいところです。


一方で、こんな結果も出ています。


「住まいを決めるうえで重視することは何ですか?」との質問に対する答えです。


住宅の性能がよいこと
 ミレニアル世代 …68.7% 親世代 …66.3%


住宅の内装が好みである(または自分で選べる)こと
 ミレニアル世代 …56.0% 親世代 …47.0%


住宅の面積が広いこと
 ミレニアル世代 …47.0% 親世代 …41.3%


住宅の外観が好みである(または自分で選べる)こと
 ミレニアル世代 …38.3% 親世代 …36.3%


ご覧のとおり、いずれの項目も賃貸住宅が弱点としている部分です。


ミレニアル世代も、親世代も、パーセンテージに大きく開きはないものの、結局のところおしなべてミレニアル世代の要求が厳しい点にも、我々は注意をしておくべきでしょう。


ミレニアル世代は、住む場所はノマド的(流動的)でよいと考えている傾向が強いものの、かといって、そこが低質な一時しのぎの環境でも構わないといっているわけではありません。


住まい一個一個がもつ快適性やポテンシャルへの要求は、どうやら親御さん世代以上に厳しいらしい、と、いうことです。


本調査では、ほかにも住まいに対するミレニアル世代の意識が、賃貸住宅と好相性であることを示す結果がいくつも並んでいます。


それらを受け、ジャパンネット銀行さんはこう結んでいます。


「今後は、『賃貸or持ち家』、『一軒家orマンション』といった二者択一におさまらない、新しい住まい方・暮らし方を体現するミレニアル世代がますます増えていくかも」


たしかに、増えることはあっても、おそらく減ることはないように感じられます。


(文/朝倉継道 画像/123RF)


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この記事を書いた人

編集部

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